【元葬儀屋】初霊安室

入ってひと月位経った頃の話
まだ先輩から本格的に仕事を仕込んで貰う前の話だ。
その当時、比較的暇な古株さんが平時は色々教えてくれていた。
古株「自分、仏さん触るの何ともないんか?」
俺「正直慣れて来ましたね、流れがわかってきたのでw」
古株「そうかぁそりゃ良かったわ、この業界はすぐ辞めるヘタレばっかりやさかいな」
少し寂しそうに俺に話してくれた。
聞いた話では、古株さんが目をかけた新人は悉く早期離職してしまい、新人教育から外されてしまったそうだ。
(そんなに厳しい人ではないんだけどな。先輩さんのがよっぽど怖いし…)
この後、先代死体処理専門員の本領発揮をみるのだが、全て話すには余りに話が多すぎて割愛する。
つうか俺の霊安室処女体験は中々にハードなモノになるw

ぷるるるる…
古株「はい○○会館でございます。はい、はい、わかりました。それでは宜しくお願いします」
(電話の時は標準語なんだよな(^_^;))
古株「警察引き取り入ったわ、自分着いて来るか?あんまりワシは気が乗らんが相方いるさかいな…どや」
俺「いつかは必ずやってくる仕事ですし、遅かれ早かれっすよ!」
ホントは超帰りたいんすけどwww
古株「…そうか!なら一緒に行こか!何かあってもワシに任せとけ!な?」
俺「はい!お願いします!」
丸投げする気満々ですが(・∀・)ヨロシク!
俺の人生で初めて、地下結界(ウチではそう呼んだ)を破る日がやって来た。

一人でこなす様になるまでは余り詳細書類をじっくり見せて貰う事はなかったが、古株さんは何でも見せてくれた。
古株「ええか、霊安室は空気が違う。今までの病院引取りと同じに考えたら空気に呑まれるでw気ぃ付けや」
俺「押忍!気ぃ引き締めて行きますんで宜しくお願いします!」
帰りテェwww
引取り用の準備をしながらそんな会話をしていた。
古株「これTVで見た事あるやろ」
おもむろに手渡されたモノはかの有名な納体袋である。
正直いきなり現実を突きつけられたみたいで固まってしまった…
古株「自分、大丈夫か?」
俺「いや、本物見ると実感湧いてきますよねw」←勿論強がりですwww
古株「せや、実感しながら冷静に仕事するんがプロや。ほんなら行くで」
あー、カッコいい事言ったけど全く安心しないんですがwwwどうしよwww
強がっちゃったよ……(´;ω;`)

やベーやべえwww強がっちゃったよ…
もう引き返せない空気の中、会館から程近い警察署に着いた。
免許の住所変更や遺失物届け出など、平時訪れる空間にまさかあの様な空間が在ろうとは…。
古株「ほな引取り様にバックで停めるから後ろ見ててや」
俺「オッケーっす」
車を降りてバックを見ようとした。

下りのスロープ⁇こんなのが裏側にあったのか…。薄暗れぇな…。
俺「オーライ、オーライ、OKでーす」

ゾクゾクゾクっ…。
はっ

振り返るとそこには薄暗い灯りの中に青色のペンキで塗られた二枚扉があるだけだった。

(こえぇ…っ!何だか分からんがこれが呑まれるって奴か⁉︎)

正直この時点で玉ヒュンヒュンしてましたwww

えと…ここから入るのかな…?
二枚扉に近づくと
古株「ちゃうちゃうwそこは仏さん連れて出て来るトコやw反対から入る奴なんかおらんぞ~w」
笑ってねーで先に説明しといて下さいwww何か新人教育外されたのわかって来た気がするwww

歩いて裏側の受付で古株さんが受付をしていた。というかすぐ側にいたが完全にテンパって頭に内容が入ってコネー(;´д`)
ホントに霊安室手前の再確認の内線まで完全に記憶が欠落している…。しっかり呑まれてしまいましたwww

しかし、まだ序の口なんですよねwww

霊安室前に来たら後は扉を開けるだけ何だが…。何て言うか空気に粘り気があって身体に纏わり付くこの感じ…吐きそうw(泣)

古株「中に入ったら仏さんの確認、自分してな?経験やさかい」←シレッ
俺が返事をする間もなく勝手に扉を開け放つ。

ガシャン、キィィィー。
古株「失礼致します」
(までマテまて‼︎心の準備がっ…!)

古株「ほら、はよ」

あんた、新人教育向いてないよ(´・ω・`)

完全にアタマが真っ白になってしまった…
古株(しゃーなしやで)
と言わんばかりに担当官とやり取りを始めた。
ジジイ‼︎俺の心の準備とか考えろよ⁉︎
と、今では余裕のツッコミも入れられるが、あの当時俺の○玉は体内に引っ込んで出て来ない位、俺のメンタルと同調しまくりのシンクロ率130%超えを叩き出していたはずだwww

古株さんがアゴで早く確認する様に催促して来た。
俺「しっしつるいなやてひやゃすっ」
噛みっ噛みで納体袋を開け様とすると…

担当官が脚にタグが付いているから足元から開けるように、と指示して来た。

ジジジー…。
(足だけなら…)

⁈⁈⁈…‼︎

ゲロゲロゲロゲロ…!
吐いちゃいました☆テヘッ

だって足だと思って開けたら…。

思いっきり顔ですやん。めっさ見てますやん(爆泣)(´;ω;`)

そこには足があるはずだったのに思いっきり顔面がそこにあった。
薄暗いのでタグを見ようと顔を近づけて開けたから、かなり濃厚な距離でご対面してしまったからもう大変…(;´д`)
辛うじてご遺体には吐瀉物をぶちまける事はなかったが、壁際で盛大にマーライオンの様に吐いたのは今となってはいい思い出だ。

古株「なんや、吐いたんかいな。スンマセン、チョット外させますわ」

お前のせいだお前のっ!
担当官も酷いが俺の心の余裕を根刮ぎ持って行きやがってっ‼︎
当時はそこまで考えが至らなかったが、数ヶ月間は古株さんに心を開く事は無かった。

勿論外れた後も泣きながら仕事をし、会館に帰ってから先輩に散々笑われてしまった。

二度と古株さんの親切っぽい行動を信用しないと心に誓った瞬間だった。
(本気の仕事の時は顔から笑がなくなるが自分が楽したい時はニヤニヤしてるからなっ)

 

 

檀家の居ない生臭坊主

夕方に引取りが入り、自宅へと御遺体を移送する事になった。

俺「このまま担当するんですかね」

先輩「そうなるだろうな、自宅に仏壇もないらしいし、何処かしらの寺院を紹介しないとな」

俺「宗派によりますけどね…何宗かわかるんでしょうか」

先輩「それは当家次第だな、新宅だしこればかりはな。」

御遺体を自宅へとお送りし、一般的な枕飾りを完了してから今回導師を勤めて貰う寺院の話になった。

俺「ご宗旨はお分かりでしょうか」

喪主「全くの無信教なもので…」