勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」

1: NIPPERがお送りします 2014/11/03(月) 17:45:30.02 ID:vaQlw0BD0
勇者「人間界の侵略を続ける魔王軍に抗うため一人立ち上がり」

勇者「世界中を旅して魔王軍に征服されていた各国を解放し」

勇者「伝説の武具を揃えた上、この世で唯一光の精霊の加護を得て、遂には魔王を打倒した」

勇者「そんな世界の救世主、この世の伝説となった勇者が俺の親父です」

勇者「そんな偉大すぎる勇者を父に持つ俺が、今、旅立ちの報告をするために国王の元へ謁見に向かっています」

勇者「え? どこに旅立つのかって?」

勇者「勇者と名の付く人間が旅に出るっつったら魔王討伐のために決まってんだろこんちくしょう」

2: NIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/03(月) 17:46:52.23 ID:vaQlw0BD0
国王「おお、勇者よ。よくぞ参った」

勇者「ははぁ~」

国王「おお、そうかしこまるでない。表をあげい」

勇者「お心遣い痛み入ります。本日は出立のご報告に参りました」

国王「そうか、遂に……あれからもう五年もたつのか」

勇者「月日が経つのは早いものです。私もこの日を待ち望んでいた故、なおさら」

国王「うむ…お主の父親のことは残念であった。しかしその血を継ぐお主がこのように立派に育ち、父の遺志を継ぐ……あやつも草葉の陰で喜んでいるじゃろう」

勇者「もったいなきお言葉……必ずやこの世界に平和を取り戻し、父の無念を晴らしてみせます。それでは、これにて」

国王「勇者よ。町の酒場に寄っていけ。魔王討伐の旅に同行を志願した者達を集めてある。その中からお主の目で選抜し、仲間として連れていくがよかろう。……決して、父の二の舞とならんようにな」

勇者「重ねてのお心遣い、感謝の言葉もございません。ご厚意についてはありがたく頂戴いたします」

 キィ……バタンッ!

勇者(………)

勇者( や っ て ら ん ね い Y O ! ! )

3: NIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/03(月) 17:48:45.14 ID:vaQlw0BD0
勇者(まあ簡単に今までの流れを振り返るとね、居たんですわ。何か魔王の上に大魔王ってーのが)

勇者(ほんで大魔王っちゅーのがなんか魔界とか何とかいう世界に居るっちゅーんですわ)

勇者(これに関しては目から鱗だったね。どっからあんなに魔物うじゃうじゃ沸いてくんだって思ってたからね。まさか魔界とはね。もう一個世界があったとはね)

勇者(そこで満足しとけよ!! 世界足んな~い、もう一個世界欲しい~って欲張りすぎるだろ!! 死ね!!)

勇者(まあ俺の親父もね、そう思ったんでしょう。もうぷりぷりしながら魔界に乗り込んでいったんすわ。5年前にね)

勇者(そんで、まあ……帰ってこなかったんすわ)

勇者(…………)

勇者( そ れ で な ん で 後 釜 が 俺 な ん だ よ ! ! )

勇者(おかしいよ! 息子ってだけじゃん! いや、わかるよ!? 何かを俺に期待しちゃうみんなの気持ちはわかるよ!? 理解は出来るよ!?)

勇者(でも俺なんも受け継いでないじゃ~~ん!! 光の精霊の加護とかももらってねーし伝説の武器とかも預かってねーし、それっぽい情報とかも受け継いでねえしぃ!!)

勇者(元々親父は王宮で騎士やっててその騎士隊の中でも随一の剣の使い手だったらしいけど、俺なんも教わってなかったしぃ!?)

勇者(ってか痛いのとか嫌いだから教えよう教えようとする親父とか周りの人から逃げ回ってたじゃん! みんなそれ知ってんじゃん!!)

勇者(なのに親父がどうやら死んだらしいってなってからのプレッシャー何なの!? 次はお前でしょ的プレッシャー! 特に母ちゃん!! 実の親なのに我が子を死地に送るのにスゲー積極的!! なんなの!?)

勇者(魔王討伐用に鍛えるにしてももっと下地が出来てるやつの方がいいじゃ~ん実際そんな奴いっぱい居たじゃ~ん! ってか今酒場に集まってるやつって大抵そんな奴じゃねーの!?)

勇者(なのに俺にだけすげー期待かけてアホのように修業させて……いやー思い出したくない。この5年は地獄だった。みんなの期待が重すぎるのもあって体力的にも精神的にも地獄だった)

勇者(だからまあ、実は俺自身この日を待ち望んでいたってーのはホントだったりする。ようやく俺はこのプレッシャーまみれの国から逃げ出すことが出来るんだ……)

勇者(いや、ホントきつかった……みんななんかやたら俺のこと目で追うから、やることなすこと監視されているようで……)

勇者(おかげでこの年になっても女の子とろくに手を繋いだこともねーYO!!)

勇者(きゃああああああああやってられるかあああああああああああ!!!! やりなおす!! 俺は俺の青春をこれからやり直してやるんだ!!)

勇者(というわけでパーティーは可愛い女の子で固める。ウハウハハーレムパーティーや!)

勇者(魔王討伐? 何も打倒魔王のために動いてるのはこの国だけじゃない。適当に流してりゃそのうち誰かが代わりにやってくれるさ!!)

勇者(………まあ、この5年その誰かは一人も現れてない訳なんだけど)

4: NIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/03(月) 17:50:03.98 ID:vaQlw0BD0
―――城下町

武道家「よう。無事王様への挨拶は終わったか?」

勇者「……なんだよお前こんなとこで」

武道家「お前を待っていたのさ。仲間を何人か連れていくよう、王にも言われただろう? 酒場で待っていてもよかったんだが……ぞろぞろと人が固まっている場所は好かんでな。抜け出してきたのさ」

勇者「生憎だったな、お前は連れていかんぞ。俺はウハウハハーレムパーティーで道中面白おかしく過ごすんだ。そこに貴様のような爽やかイケメンが入る余地はない」

武道家「おいおいつれないな。幼少からの古い付き合い…俺たちは所謂幼馴染ってやつだろう?」

勇者「そんな属性は貴様に必要ない。幼馴染が貴様のようないけ好かない男しかいない現実に涙が止まらんよ僕ぁ」

武道家「お前の助けになれるよう、腕を磨いてきたんだがな。残念だ。ま、気が変わったらまたいつでも声をかけてくれ」

5: NIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/03(月) 17:51:57.57 ID:vaQlw0BD0
―――酒場

酒場のママ「あらいらっしゃい勇者ちゃん。王様から話は聞いてる?」

勇者「ああ、ここに俺の仲間志願の奴が集まってるんだろ? 何人くらいいるんだ?」

酒場のママ「多いわよ~。え~っと、名簿によれば47人ね。もう奥の部屋ぎゅうぎゅうよ?」

勇者「名簿って顔の肖像ついてる?」

酒場のママ「顔はついてないけど、今の職業とこれまでの経歴は載ってるわよ」

勇者「ちょっと見せてくれ……ふぅ~む、ほんほん。おん? この名前……」

勇者「ちょっとママさん、この子呼んできてくんない?」

酒場のママ「はいは~い」

僧侶「どうか私を魔王討伐の旅に連れて行ってください、勇者様!!」

勇者「僧侶たんキタァァァーーーーーーッッ!!!!!!」

僧侶「ひえっ!?」

勇者(名前見てもしかしてと思ったらビンゴォォォォオオオ!! 普段は教会で修道女やってる僧侶たんだぁぁぁあああ!! はぁぁぁああああん!!!!)

勇者(その麗しい見た目!! 敬虔な修道女ぶり!! 前々からいいないいなと思いつつ遠くから眺めるだけだった僧侶たんがまさかのパーティー志願!!?)

勇者(ふああああああああん心臓の音やばいよおおおおおおおおおお!!!!!!)

僧侶「え、えっと、あの……」

勇者「ご、ごほん。ちなみに僧侶た…僧侶さんはどうしてこの旅に志願を?」

僧侶「は、はい! 魔王が復活し、また魔物たちの活動が活発になったことで、両親を失い、孤児となった子供の数が増えてきています。……私が身を置いている教会でも、多くの孤児となった子供たちを保護し、孤児院へ斡旋してきました……」

僧侶「もう、あんな子供たちの顔を見るのは嫌なんです!! そのためなら私、何でもします!! 命だっていらない!!」

勇者(はああああん天使だよおおおおおおお!!!! 僧侶たあああああああん!!)

僧侶「どうか、私を連れて行ってください!! お願いします、勇者様!!」

勇者(お辞儀した拍子におっぱいが盛り上がったよおおおおおおお!! 何この子完璧じゃあああああん!! 可愛い、優しい、おっぱい大きい、完璧じゃあああああん!!!!)

勇者(何でもするって言った!? 何でもするって言った!!? じゃあお嫁さんに来てくださいいいいぃぃぃぃいいいい!!!!)

僧侶「………うぅ」

勇者(めっちゃキラキラした瞳でこっち見てるぅぅぅううう!!!! 何か最初っから好感度MAXっぽいぃぃいいい!!!!! 伝説の勇者の息子効果ぁぁあああああ!!!!)

勇者(あー、こういう時だけは親父に感謝だわ、マジで)

勇者「こちらこそよろしく、僧侶ちゃん」

僧侶「ちゃ、ちゃん?」

勇者(あ、やっべつい言っちゃったキモイと思われちゃったあああああ!!!?)

勇者「ご、ごめん! 不愉快だったかな!?」

僧侶「い、いえ、少し驚いただけです! これからよろしくお願いしますね、勇者様!」

勇者(はああああああんやっぱ天使ぃぃぃぃいいいいいいい!!!!)

6: NIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/03(月) 17:53:57.22 ID:vaQlw0BD0
勇者(パーティーはやっぱ多くて4人だよなあ……宿屋とかも4人部屋とか2人部屋多いし、5人にすると確実に俺だけ1人部屋にはぶられる可能性大)

勇者(かといって6人以上にすると大所帯で色々身動きが取りづらいだろうし、下手すりゃパーティー内で3人・3人のグループに分かれかねん)

勇者(うん、やっぱ4人だな。当初は4人で旅して、もう少し人数がいると感じたらまた仲間を増やす方針でいこう)

勇者「一応確認しとくけど、僧侶ちゃんは水の加護を受けてるよね? 土と風の加護はまあ受けてないにしても、火の加護は受けてるかな?」

僧侶「ご、ごめんなさい。精霊様の加護は、水の精霊様の分しか受けていません」

勇者「いやいや謝らなくていいよ。確認しただけだから。それじゃあ僧侶ちゃんの役割は回復をメインとしたバックアップだね」

勇者「となると、土と風に特化したアタッカーがやっぱ一人は欲しいな」

※精霊の加護
瘴気をまき散らし、世界を汚染する魔物は人間だけでなく、この世界に生きる精霊たちにとっても天敵。精霊は何か生物の体を介在しなければその力を振るえないため、魔物を退治しようという人間には積極的に力を貸してくれる。
土・風・水・火の区分については、その加護の効能によって人間側が勝手に大別したもので、別に精霊が明確にその4種族に区別されるわけではない。

・土の精霊…加護を受けることによって身体能力(主に筋力・膂力)が向上する精霊の総称

・風の精霊…加護を受けることによって身体能力(主に反射・敏捷)が向上する精霊の総称

・水の精霊…加護を受けることによって傷の回復など、補助に特化した呪文を振るえるようになる精霊の総称

・火の精霊…加護を受けることによって敵の殲滅を目的とした攻撃呪文を振るえるようになる精霊の総称

ただし、精霊の加護を受けるためにはその者自身に元々ある程度の能力が求められる。これは、精霊自体の数と、精霊一体が与えられる加護の数が限られているため、精霊が加護を与える対象を慎重に選別しているものと考えられており、またこのことから精霊にも明確な意思が存在しているものと推測されている。(あくまで推測であり、精霊と意思の疎通が出来たという事例は報告されていない)
魔物を倒すためには精霊の加護は必須である。
魔物を多く倒すことで精霊の目にとまり、より多くの加護を得ることが出来る。

僧侶「あのう…勇者様」

勇者「なんだい?」

僧侶「差し出がましいようですが……もし土や風の精霊の加護を受けた『戦士』をお求めならば、奥に居る同行志願者の中に私の友人がおります。よろしければ、彼女もこの旅に同行させてはいただけないでしょうか」

勇者「彼女? ってことは女の子?」

僧侶「はい。しかし、腕は確かです」

勇者「可愛い?」

僧侶「はい?」

勇者「ごめん今のなし」

僧侶「か、可愛いかどうかと言われれば……この国で一番の美貌の持ち主であるともっぱらの評判です」

勇者「決定」

僧侶「ふえ?」

勇者「決定です。僧侶ちゃん、早速連れて来て」

僧侶「は、はい! ありがとうございます!!」

勇者(こちらこそありがとおおおおおおおおおおおお!!!!!!)

7: NIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/03(月) 17:55:22.60 ID:vaQlw0BD0
勇者(やばい! 何か順調すぎてやばい!! 美貌、という言い回しをするからにはその子はきっと綺麗系お姉さまなんでしょう!! 可愛い系おっぱい大きい僧侶たんに、綺麗系スレンダー戦士たん(想像)!! じゃああと一人はどうしましょう!? あらやだやっぱり無口系クール子たんかしら!?)

勇者(夢が広がりゅぅぅぅううううううう!!!!)

僧侶「お待たせしましたー!」

勇者(来たぁぁぁぁああああ!!!!)

僧侶「この子が私の友人の戦士です。ほら、ご挨拶して戦士!」

戦士「……戦士だ。よろしく頼む」

勇者「……あ、はい。こちらこそ」

勇者(……あれ? 何かおかしい。目がおかしい。あの子の目僧侶たんみたいに全っ然きらきらしてない。むしろなんか……汚物を見る目?)

勇者(やだ、こわい!! 確かに超美人だけど、女の子と碌に接点持ってない俺にその目はハードル高い!! 萎縮しちゃう!!)

戦士「言っておくが、私は本気で魔王を、ひいては大魔王を倒すためにここに居る……くれぐれもよろしく頼むぞ、勇者殿」

勇者(えーーーなんか釘刺されたーーー!!!! こわーいやばーーい!! 何か勇者『殿』ってのも皮肉っぽーーい!!)

勇者(なんでー!? この人俺のこと何か知ってるのーー!? こわーいやだやばーーい!!)

僧侶「もう、戦士ったら勇者様に対して失礼よ!!」

戦士「気に障ったなら、すまない。だがこれが私の偽らざる気持ちだ。覚えておいてくれ、勇者」

勇者(わーやっぱりもう呼び捨てだー。この子俺に対する好感度ひっくーい。マジで何でかわかんなーい。ヤダーおうち帰りたーい)

僧侶「もう戦士ったら……ごめんなさい勇者様。この子、本当はとってもいい子なんです。ちょっと言動がぶっきらぼうなだけで」

勇者(わーチェンジって言えなーい。僧侶たんのフォローが入っちゃったらもうチェンジって言えなーい。帰りたーい)

戦士「それで…もう出発するのか? それとも、まだ仲間を募るのか?」

僧侶「どうします? 勇者様」

勇者「仲間、ええと、はい、仲間ね! 仲間はね、もう一人は目星ついてるから! ほんじゃ、行こっか!!」

8: NIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/03(月) 17:56:38.74 ID:vaQlw0BD0
―――武道家の家

武道家「ハーレムを作るんじゃなかったのか?」

勇者「無理! 無理無理!! あの戦士さんの加入でハードル一気に上がっちった!! これにあと一人クール系美少女加えたりなんかしたら俺捌ける自信がない!!」

武道家「無理やりクール系にせんでもいいだろうが。もっととっつきやすい奴がいくらでもいたろう」

勇者「無理だよ! いざ現実に女の子二人仲間に入れたらプレッシャーすげえよ! これにあと一人女の子入れたりなんかしてみ? 俺会話に混ざれる自信ねえよ!!」

勇者「だからお前も一緒に来い! 何かこう上手いこと男女の間の緩衝材になれ!!」

武道家「やれやれ、純粋に魔王討伐の戦力として声をかけてもらいたかったもんだが…ま、よかろう。お前と共に征くという結果は変わらん」

勇者「……待て、今気づいた。何でお前そんな準備万端なん?」

武道家「それなりに付き合いも長い……お前の行動など読めるさ」

勇者(は、腹立つ!! 言外にどうせお前がハーレムなんて無理ってわかってたよプゲラって言われてる!!)

武道家「というわけで、武道家だ。勇者とはわりとガキの頃からつるんでる……よろしく頼むぜお嬢さんたち」

僧侶「よろしくお願いします!」

戦士「……よろしく」

勇者(何か思ってたのと違ーう!! 何かガチの旅になりそー!! ヤダー怖ーい帰りたーいでも帰っても居場所ないから行くしかなはーい!!)

勇者(ちくしょう! 恨むぞ親父ィ!!)

第一章  旅立ち       完

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